民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律案
僕の貯金はどうなるの!?

Q1.休眠預金等をなぜ活用できるのか?

A.預金等は、
    ①金融機関が決済機能等の公共的役割を果たすための原資
    ②預金等の保護に際しては公的資金の活用も想定
    ③広く国民一般が利用 
  といった性質を有している。このような預金等の性質に照らすと、払い戻す努力を尽くした上で、休眠預金等を広く国民に還元することには合理的な理由がある。

Q2.預金者保護のために休眠預金等を活用すべきではないか?

A.現在、預金保険機構には巨額の資金があり、直近の預金保険料率について引き下げもなされたところ、休眠預金等を預金保険料等に充てるべき必要性に乏しい。

 従来の行政手法では対応困難な課題の解決につながり、社会全体への波及効果の大きい民間による公益に資する活動に活用した方が、その効果も大きいと考える。

Q3.国庫に入れずに休眠預金等を活用するのか?

A.諸外国は、休眠預金を国や州政府の一般会計に入れる例がある一方、福祉事業等に活用している例もある。我が国としては、①預金の公共的役割等に照らし、②「人口急減・超高齢化社会」到来に備えて、休眠預金等を活用する。

その活用方法については、

①原資は預金等であることから、単に資金を個人に支給して費消する活動ではなく、継続的に行われる民間の活動を支援することにより当該活動(※1)の拡大を目指す

(※1)法案における「民間公益活動」は「・・・国及び地方公共団体が対応することが困難な社会の諸課題の解決を図ることを目的として民間の団体が行う公益に資する活動であって、これが成果を収めることにより国民一般の利益の一層の増進に資することとなるもの」

従来の行政手法では対応困難(※2)な課題を解決し、今後大きな役割を果たすことが期待される

(※2)行政は、法令と予算に則って活動するため、柔軟な対応が不得手。

③民間企業に対する資金供給や、公的部門における資金量に比して、資金が極めて不足している

等の諸点に鑑み、「民間公益活動」を促進するために活用することとしたい。

休眠預金等を民間公益活動の促進に活用することにより、銀行等の融資による民間の事業拡大効果に準じた効果とともに、行政による公共の福祉の増進効果に準じた効果をもたらし、社会全体への波及効果が大きくなることを期待している。

Q4.預金者等の権利を侵害しないのか?

A.休眠預金等については、預金者等からの請求があればいつでもその全額を支払うこととするので、預金者等の権利を侵害するものではない。

Q5.マイナンバー制度と休眠預金活用との関係をどう考えているのか?

A.マイナンバーの預金口座に対する付番は、平成30年1月から開始される予定であるが、金融機関に対して預金者が自らのナンバーを告知する義務が課されないため、付番が普及するまでは時間がかかるものと見込まれる。

将来的に、マイナンバー制度が休眠預金等の発生にどの程度影響するのか不透明であるが、付番開始時期等を踏まえれば、当面は、休眠預金等として活用できる額は一定程度発生するものと思われる。

Q6.消滅時効とこの法案との関係はどのようになっているのか?

A.この法案では、預金者等からの支払請求があればいつでも応じるという現行の金融実務が継続できるよう、消滅時効にはよらず、別の特別の定めを設けている。

具体的には、休眠預金等が預金保険機構へ移管された際に、当該休眠預金等に係る債権債務は消滅するが、預金者等であった者が、移管後においても支払を受けられるように、特別の請求権(休眠預金等代替金請求権)を付与することにしている。

【第7条第1項及び第2項参照】

Q7.休眠預金等の活用は、時効を援用した上で行うべきではないか?

A.この法案は、休眠預金等を預金者等に払い戻す努力を尽くした上でも、持ち主が現れず、今後も現れないと想定されるものについては、これを活用できるのではないか、という考え方に基づいている。

消滅時効を援用してしまうと、権利関係が完全に整理されてしまい、預金者等への支払請求に応じられないことになってしまうことから、適当ではないと思われる。

なお、休眠預金の活用を行っている他の国においても、支払請求があればこれに応じる制度となっている。

【第7条第1項及び第2項参照】

Q8.預金者等の支払請求に応じる場合、活用可能な休眠預金等は残るのか?

A.過去の実績をみると、毎年の休眠預金等の発生額のうち、預金者等に払い戻される額は4割程度となっている。

こうした実績を踏まえた上で、預金者等への支払に充てるための準備金を積み立てておくことが必要であるが、活用可能な額は一定程度確保できるものと思われる。

【第7条第2項、第8条及び第14条参照】

Q9.どのような分野に休眠預金等を活用するのか?

A.我が国は、現状のままでは「人口急減・超高齢化社会」が到来し、国民生活の質・水準が低下するなど様々な困難に直面するおそれがあるところ、従来の行政手法では対応困難な課題の解決につながり、社会全体への波及効果の大きい民間による公益に資する活動を促進することが急務である。

そこで、このような活動に休眠預金等を活用することとしている。具体的には、以下の分野に活用することとしている。

① 子ども及び若者の支援
  ② 日常生活又は社会生活を営む上での困難を有する者の支援
  ③ 地域活性化等の支援

【第16条第1項及び第17条第1項参照】

Q10.休眠預金等を生活保護受給者等に支給するのか?

A.休眠預金等の活用は、民間の団体が行う公益に資する活動であって、これが成果を収めることにより国民一般の利益の一層の増進に資することとなるものを対象としており、日常生活又は社会生活を営む上での困難を有する者や子ども・若者等に対する単なる金銭の支援ではなく、行政が対応することが困難な、これらの者等を支援する活動を活用先としている。

したがって、例えば、行政による対応が既に法律により規定されている生活保護受給者等の個人への金銭の直接給付は、本法にある休眠預金等の活用に関する基本理念等に適さず、活用対象としてふさわしくないと考える。

【第16条及び第17条参照】

Q11.暴力団等に休眠預金等が活用されないよう対処しているのか?

A.宗教団体、政治団体、暴力団又はその構成員等の統制の下にある団体に対しては、休眠預金等が活用されない旨を法律上明記することとしている。

【第17条第3項参照】

Q12.どのような方法で休眠預金等を活用するのか?

A.指定活用団体から資金分配団体に対しては、助成又は貸付の方法により活用し、資金分配団体から現場の団体に対しては、助成、貸付又は出資の方法により活用することとしている。

【第21条参照】

Q13.NPOバンク等に対する貸付けによる休眠預金等の活用は、基本理念にそぐわないのではないか?

A.資金分配団体としてふさわしいと考えられる団体の中には、NPOバンクのように、貸付事業を行うことで民間公益活動を行う団体を支援するところもある。貸付けといっても活動の支援も行う伴走型の貸付けなど様々なものがあり、貸付条件の設定なども様々な形が考えられるなど、資金分配団体の創意工夫を生かす余地を広く確保しておくべきものと考える。

なお、休眠預金等の貸付けによって収益を上げて、指定活用団体の人件費等を賄うことは考えていない。

【第16条、第21条及び第29条参照】

Q14.なぜ指定活用団体となるべき新しい団体を一つ作るのか?

A.指定活用団体は、行政が対応困難な様々な活動を支援対象とするところ、特定の目的を有して活動している既存の団体では中立性の確保が困難である。

休眠預金等の活用は、民間の創意工夫を生かした画期的な取り組みであることから、各分野の英知を結集した組織を新たに作り、指定すべきである。

Q15.どのように事業の監督を行うのか?

A.(1)監督に係る第一義的な責任は、休眠預金等の活用に関する事業の実施主体である指定活用団体が負うこととしている。具体的には指定活用団体は、資金分配団体等に対し

 
① 毎年度の監査のほか、必要に応じ報告徴収や検査の実施
② 事業報告書を提出させること
③ 不正や目的外使用があった場合には返還させること

等により、監督を行うことを予定している。資金分配団体に対しても、現場の団体に助成等をする際には、同様の監督を行うことを求めることを予定している。

【第22条参照】

(2)そして、指定活用団体に対する監督については、内閣府が責任を負うこととしている。具体的には、以下のような監督権限等を有する。

  • 基本方針・基本計画の策定・公表を通じて、休眠預金等の活用に関する国としての考え方を示す
  • 指定活用団体が作成する業務規程、事業計画等の認可
  • 立入検査
  • 事業報告書等を提出させた上で評価
  • 役員の選任又は解任の認可
  • 法令違反、不正等があった場合においては役員の解任を命令
  • 指定活用団体が業務を適正かつ確実に実施できないとき等は指定の取消
  • その他必要な限度において監督上必要な命令

【第18条、第19条、第23条、第24条、第26条、第31条、第33条第43条及び第44条参照】

Q16.資金の流用や不適切な支出等にはどのように対応するのか?

A.指定活用団体の民間公益活動促進業務に係る経理については、その他の事務に係る経理と区分して整理しなければならないこととしており、民間公益活動促進業務以外に休眠預金等交付金を流用されることのないよう措置しているところである。資金分配団体及び現場の団体についても同様にその他の事務と経理を区分することを想定している。

仮に流用や不正使用等の実態が明らかになった場合は、指定活用団体と資金分配団体、あるいは資金分配団体と現場の団体との間の契約に基づき、助成金等の返還請求等の措置を講じることを想定している。

なお、年間500件ほどの助成事業を行っている既存の助成団体において不正使用等の問題にまで発展するケースは、5年に一度発生するくらいの頻度であり、極めて稀である。資金分配団体に実績のある適切な団体を選定することが重要である。

【第27条参照】

Q17.指定活用団体の指定を取り消した場合、3年経過しなければ少なくとも同じ団体についての指定はできないとされているが、その間の業務はどうなるのか?

A.指定を取り消された指定活用団体が行っていた業務については、新たに指定を受けた指定活用団体が引き継ぐこととしている。万が一指定の取消しという事態が生じた場合には、速やかに新団体を指定し、切れ目のない対応をすることとなるが、そもそもそのような事態に陥らないよう、監督する内閣府が、団体と意思疎通を図りつつ、適切な監督に努めるべきものである。

【第20条第1項第5号及び第33条参照】